街を歩いているとき、ふと立ち寄ったカフェのレジ横に小さなカードが置いてあるのを見かけました。そこには、言葉で伝えづらいときのために「指をさすだけで注文ができるイラスト」が描かれていました。以前なら「すみません、これを……」と緊張しながら話しかけていた場面で、そのカードがあるだけで、胸の奥が少しだけ軽くなるような気がしたのです。
民間企業に「合理的配慮」が義務づけられてから、1年半という月日が流れました。最初はどこか難しい法律の話のように聞こえていましたが、最近ではこうした小さなしるしを、あちこちで見かけるようになっています。それは特別なこととして構えるのではなく、誰もが心地よく過ごすための「当たり前の景色」として、私たちの生活に少しずつ溶け込み始めているようです。
合理的な配慮が義務になってから、私たちの街で見かけるようになった小さな変化
2024年の春に法律が変わり、お店や会社で障害のある人が困っているとき、無理のない範囲で助け合うことが義務となりました。それから1年半が経ち、2026年の今、私たちの周りには具体的な工夫が増えています。例えば、飲食店で「音が苦手な方のために、静かな席を選べます」という案内があったり、役所の窓口で筆談用のタブレットが常に置かれていたりする光景です。
これらは単に「決まりだからやっている」という以上の意味を持っているように感じます。相手が何を必要としているかを想像し、先回りして準備しておく。そんな優しさが形になっているのです。自分から「こうしてください」とお願いするのは、とても勇気がいることです。でも、あらかじめ選択肢が用意されていることで、私たちは「ここにいてもいいんだ」という安心感を受け取ることができます。
職場でも少しずつ広がる、お互いの「ちょうどよさ」を形にするための取り組み
働く場所においても、変化の波は届いています。20代から30代の女性から多く聞かれるのは、感覚の過敏さや、その日の体調による波との付き合い方です。最近では、オフィス内で集中するために耳栓やノイズキャンセリングヘッドフォンを使うことを認めたり、まぶしさを抑えるために照明を調整したりする企業が増えてきました。これらもすべて、合理的配慮のひとつです。
大事なのは、これらが「わがまま」ではなく、本来の力を発揮するための「道具」として理解され始めている点です。一人ひとりが異なる特性を持っているからこそ、一律のルールに縛られるのではなく、その人に合った環境を整える。そうすることで、結果的にチーム全体の仕事がスムーズに進むことも少なくありません。お互いの苦手を知り、それを環境でカバーし合う文化が、ゆっくりとですが根付き始めています。
ここで、少しだけ専門的な仕組みについて整理しておきましょう。合理的配慮とは、障害のある人が社会の中で直面する「バリア(障壁)」を取り除くための工夫のことです。ここでよく誤解されやすいのが、何でもかんでも会社やお店が応えなければならないのか、という点です。法律では「過重な負担がない範囲で」とされており、お互いに話し合って納得できる着地点を見つけることが大切だとされています。つまり今日のあなたにとって大切なのは、完璧な正解を求めることではなく、「私はこれが苦手なので、こうしてもらえると助かります」という対話を、少しずつ始めてみることなのかもしれません。
自分のペースで伝えるために。スマイルラボで大切にしている、言葉に頼りすぎない対話
私たちスマイルラボでも、この「対話」と「環境づくり」をとても大切にしています。自分に何が必要なのか、どうすれば楽に作業ができるのか。それを最初から完璧に説明できる人は多くありません。だからこそ、スマイルラボではイラスト制作やWeb制作などの作業を通じて、自分の「得意」や「しんどさ」を一緒に探していくプロセスを重視しています。
無理に言葉にしなくても、作業の進め方や休憩の取り方を見ていれば、その人に合ったペースが見えてくることがあります。「今日は少し静かな席で作業したいな」「文字で指示をもらったほうが安心するな」といった小さな気づきを、私たちは一つひとつ丁寧に拾い上げ、環境に反映させていきます。事業所という場所が、あなたにとっての「合理的配慮の練習場所」になればいいなと考えているからです。
街の中にある小さな配慮のしるしを見つけたとき、それを自分へのエールのように受け取ってみてください。世の中は、あなたが思っているよりも少しずつ、やさしい方向へ変わろうとしています。その変化の波を感じながら、まずは自分の「ちょうどいい」を探すことから始めてみませんか。
スマイルラボは、尼崎の就労継続支援B型事業所です。イラスト制作・Webメディア制作・アクセサリー制作など「作る」仕事を、あなたのペースに合わせて進められる環境づくりを大切にしています。見学/体験/相談は、公式サイトからお申し込みください。