新しい一歩を踏み出そうとするとき、どうしても頭をよぎる現実的な問題。それが「工賃(お金)」のことです。見学に来られる方や、お問い合わせをいただく方から最近特に多くいただくのが、「ぶっちゃけ、平均工賃ってどれくらいなんですか?」という切実なご質問です。
生活していくこと、自分の好きな道具を買うこと、たまには美味しいものを食べに行くこと。それらを実現するための「工賃」は、私たちが自分らしく生きていくための「ガソリン」のようなものです。今日は、B型事業所の工賃の仕組みから、スマイルラボが現在維持している「37,840円」という数字の裏側まで、包み隠さずお話しします。
そもそも「平均工賃」ってなんだろう?
まずは基本の「き」から整理していきましょう。就労継続支援B型事業所において、皆さんが作業の対価として受け取るお金のことを「工賃」と呼びます。一般的なアルバイトのような「給与」とは少し性質が異なり、事業所の収益から必要経費を除いた分を、作業時間や内容に応じて分配する仕組みです。
「平均工賃」とは、その事業所に通っているメンバー全員が1ヶ月に受け取った工賃の合計を、人数で割った数字のことです。厚生労働省の最新の統計では、全国平均は約17,000円〜18,000円程度となっています。B型事業所は「雇用契約」を結ばない働き方であるため、最低賃金の適用はありません。だからこそ、事業所がどのような仕事を作り、どうやって皆さんに還元しているかによって、この数字には大きな差が生まれます。
スマイルラボのリアルな数字:月額37,840円を推移
2026年現在、尼崎にあるスマイルラボの平均工賃は「37,840円」前後を推移しています。全国平均と比較すると、約2倍以上の数字です。これを多いと感じるか、まだまだ少ないと感じるかは人それぞれかもしれません。しかし、私たちはこの「3万7千円台」という数字を、皆さんが「無理をせず、かつ社会との繋がりを実感できるライン」として非常に大切に守っています。
なぜ、スマイルラボではこの水準を維持できているのでしょうか。それは、提供している仕事の内容に明確な理由があります。
- クリエイティブな付加価値: 単純な軽作業だけでなく、イラスト制作、ウェブコーディング、アクセサリー制作、そして輸出業務といった「専門性」や「独自性」のある仕事を取り入れています。これらは一般的な内職作業に比べ、1つひとつの単価を高く設定することが可能です。
- 「作る」から「届ける」まで: 自分たちで作ったあみぐるみを常設ブースで販売したり、ウェブメディアを通じて情報を発信したりと、自分たちのスキルを直接収益に変える仕組みを整えています。
- 効率的なシステム: 最新のITツールや輸出のノウハウを活用することで、作業の無駄を省き、より多くの収益をメンバーに還元できる体制を構築しています。
「平均」の落とし穴と、工賃の算出方法
「平均が3万7千円なら、私もすぐそれくらい貰えるの?」そう思われるかもしれません。ここで少し、算出方法のリアルな話をお伝えします。平均工賃の計算式はシンプルです。
【事業所が1ヶ月に支払った工賃の総額】÷【その月に1日でも登所した人数】
実は、ここが重要なポイントです。スマイルラボには、週5日しっかり通ってウェブ制作に打ち込む方もいれば、体調に合わせて週1日、1時間からイラストを描きに来る方もいます。たくさん通う方は平均以上の工賃(例えば5万円〜6万円以上)になることもありますし、ゆっくりペースの方はそれに応じた金額になります。
私たちが「37,840円」という平均値を公表しているのは、「みんながこれくらい稼がなきゃいけない」というノルマではなく、「事業所全体として、これだけの収益を皆さんに還元できる力がある」という一つの信頼の指標だと考えてください。
工賃を維持するための「新規受入」の工夫
この高い工賃水準を維持し続けることは、実は事業所にとっても簡単なことではありません。新しいメンバー(利用者さん)が増えることは大きな喜びですが、急激に人数だけが増えて、肝心の「仕事」や「サポート体制」が追いつかなければ、一人ひとりに分配できる工賃は下がってしまいます。
そのため、スマイルラボでは新規の受入にあたって、以下のような工夫をしています。
・仕事の受注バランス管理: 新しい方が入ったとき、その方の「得意」を活かせる新しい仕事の案件(コーディングやイラスト依頼など)を並行して確保できているか、常に調整を行っています。
・スモールスタートの推奨: 最初から「工賃のためにフルタイムで!」と意気込みすぎると、多くの場合、心が疲れてしまいます。まずは週1〜2日から始め、徐々に「自分ができる仕事」の幅を広げていく。そのプロセスを丁寧に踏むことで、結果的に安定した工賃収入へ繋げていきます。
「工賃が高いから、厳しいノルマがあるのでは?」という不安は、一切不要です。私たちは、数字のために皆さんを追い立てることは絶対にしません。むしろ、皆さんが心地よく作業できる環境を整えることこそが、結果的に質の高い作品を生み、工賃を維持する好循環を作ると信じているからです。
不安を抱えているあなたへ:お金は「安心」のための道具
ここまで数字の話をしてきましたが、私たちが一番伝えたいのは、工賃はあくまで「あなたがあなたらしく、安心して暮らすための道具」だということです。
「今の体調で、お金のことまで考えるのはしんどい」「B型に通っても、お小遣い程度にしかならないなら意味がないのかな」。そんなふうに悩んでしまう夜もあるでしょう。でも、スマイルラボでの1時間は、ただの作業時間ではありません。あなたが描いた一本の線、あなたが打ち込んだ一行のコード。それが「37,840円」という数字の一部となり、誰かの役に立ち、巡り巡ってあなたの生活を支える。その「手応え」こそが、心の自立を支える一番の薬になります。
スマイルラボでは、工賃のことはもちろん、生活面での不安や、将来のステップアップについても、専門のスタッフがいつでも相談に乗ります。まずは見学や体験を通じて、「今の自分なら、どれくらいのペースで、どれくらいの工賃を目指せるか」。そんな具体的なシミュレーションを一緒に作ることから始めてみませんか。
スマイルラボは、尼崎の就労継続支援B型事業所です。イラスト制作・Webメディア制作・アクセサリー制作など「作る」仕事を、あなたのペースに合わせて進められる環境づくりを大切にしています。見学/体験/相談は、リタリコや公式サイトからお申し込みください。
